Webアクセシビリティについて

アクセシビリティとは

アクセシビリティ」という言葉は、1999年頃に日本語としても登場するようになり、総務省(当時の郵政省)の普及・啓発活動もあって徐々に認知されつつありますが、一般にはまだまだ馴染みの少ない言葉です。

近年の片仮名やローマ字で書かれた目新しい外来語・外国語の氾濫を危惧して文部省が設置した、国立国語研究所「外来語」委員会(平成14年8月〜平成18年6月)が行った『外来語定着度調査』によると、「アクセシビリティ」の国民全体の認知率は11.4%に留まり、”分かりにくい外来語”と位置づけられてしまっています。
「外来語」委員会の言い換え提案書によると、「アクセシビリティ」の意味は情報やサービスなどが,高齢者や障害者も含めてどんな人にも利用しやすいことと定義されており、その言い換え語例としては、【使いやすさ】,【接続しやすさ】,【近づきやすさ】,【利便性】,【交通利便性】,【交通の便のよさ】,が挙げられています。

私たちがWebコンテンツ(ホームページ)についてのアクセシビリティを論じる際には、そのホームページの内容がすべての利用者にきちんと伝わり、誰もがそこで提供されている機能やサービスを操作し利用できるWebコンテンツを、「アクセシビリティが確保されている(アクセシブルである)」と呼んでいます。

もっともっと、「Webアクセシビリティ」が広まっていって欲しいものです。

様々なWebの利用環境と配慮の必要性

「Webアクセシビリティ」とは、障害者や高齢者を含め多様な利用環境からWeb(ホームページ)にアクセスしているすべての利用者に対して、その内容が正しく伝わり、また誰もがそこで提供されている機能やサービスが誰もが操作し利用することが出来ることです。

しかし、自分が普段使っているWebの利用環境以外の利用者がいることを、我々はあまり知りません。Webアクセシビリティを理解するためには、まず、どのようなWebの利用環境があり、その利用者に対して必要な配慮とは何かを知る必要があります。

障害者のWeb利用

身体の障害により外出することや情報の取得が不自由であった障害者にとって、自宅に居ながら、あるいは介助者の協力を得ずにいつでも自由に様々な情報にアクセスできるWebは、たいへん便利で、もはや不可欠な社会基盤ともなっています。ただし、障害の部位や程度の違いにより、障害者のWebの利用環境は様々です。その中のほんの一例を紹介します。

全盲あるいは強度の弱視の人は、主に音声読み上げソフト(スクリーン・リーダー)を使い、パソコンに予めインストールされたソフトが読み上げるWeb上の文字(テキスト)情報を耳で聞いて内容を理解しています。したがって、ソフトが読み上げることが出来ない画像化された情報などはその内容を知ることが出来ません。画像情報(img要素)には必ず代替テキスト(alt属性)を付すなどの配慮が求められます。
また、目が見えないとマウスを使うことが出来ないため、Webの操作はキーボードだけで行います。したがって、マウスでしか操作できないような機能が使われていると、そのWebを利用することが出来なくなります。これは、四肢に障害があってマウスが使えない場合も同様です。

色覚障害により色の判別が困難な人、聴覚障害により音声がよく聞こえない人にとっては、色や音の違いだけに依存した情報が理解出来ない場合があります。予想降雨量を色分けした地図で情報提供する場合などは、別途テキストによる情報を提供したり、色の違いだけでなく色の濃淡や模様などで判別できるようにする配慮が必要です。

【参照】 こころWeb「ネットワーカー事例集」のページへ

高齢者のWeb利用

加齢による視覚や聴力、四肢の運動能力等の衰えにより、障害者と似たWebの利用状況を余儀なくされる場合があります。
また、新しいIT関連のカタカナ語の理解が困難であったり、Webの操作中に今居る場所や置かれた状況を見失ったり、不安に感じたりする場合があります。そのためには、より分かりやすいナビゲーションの仕組みを提供することが不可欠です。

様々な機器からのWeb利用

例えばモバイル環境で携帯電話のような小さな画面の機器を使っていたり、あるいは古いバージョンのOSやブラウザを使ってWebにアクセスしている利用者もいます。このような制約のある入出力装置やソフトウェアを用いた利用環境においても、内容の理解や操作に支障が生じないWebコンテンツを制作し提供することが望まれます。

その他のWeb利用環境

その他、普段はまったくの健常者であっても一時的なケガにより四肢や視力に不自由が生じていたり、あるいは騒音の中でWebを利用しているとか、周囲に配慮してサイレントモードで使用せざるを得ない場合などが想定されます。

こうした様々なWebの利用者に対して、その内容を適切に伝え、問題なくWebを操作し利用することができるよう、Webの提供者はWebアクセシビリティを確保するための要件であるJISなどのガイドラインを遵守して、制作・開発し運用する必要があります。

JISの制定

我が国では急速に高齢化が進んでおり、2015年には国民の4人に1人が65歳以上となると予測されています。そのため、日本は以前から国際社会に向けて積極的に「規格作成における高齢者・障害者のニーズへの配慮」の必要性を唱え、2001年11月には日本が提唱し議長国となって初めて実現した国際規格「ISO/IEC GUIDE 71」(Guidelines for standards developers to address the needs of older persons and persons with disabilities)が制定されました。この国際規格に準じた国内規格として、2003年6月20日に日本工業規格「JIS Z 8071:2003 高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針」が制定されました。

日本では以後、このガイドに基づいて、個別製品やサービスの開発において高齢者・障害者等のニーズに配慮を求める規格の作成が進められています。そして、情報処理装置や電気通信機器、事務機器と並んでウェブコンテンツについても、そのアクセシビリティの確保を定めた日本工業規格 JIS X 8341-3:2004「高齢者・障害者等配慮設計指針 − 情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス − 第3部:ウェブコンテンツ」(ウェブコンテンツJIS)が2004年6月20日に制定されました。

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